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高度に発達した科学は魔法と見分けが付かない

分類:博麗霊夢 霧雨魔理沙 短編 超設定
 
 
 遠い遠い遥かな未来、人類は自らを取り囲む鳥籠の狭さに気付き、そして絶望した。森羅万象の現象を支配するのは、夢でも希望でも幻想でもない。どこまでも厳密な『数』で表される式が全てを決めるのだ。その支配法則の下で人は空を飛ぶ事は適わず、多くの幻想生物はその存在を否定される。全く馬鹿げた世界だった。
 世を司るどこまでも残酷で正確な理。数多くの人間が、世界を包むその理と言う鳥籠を打ち破る為に戦いを挑んだ。勝ち目の見出せぬ絶望的な戦い、それでも人は挑む事を止めなかった。そしてその挑戦は遂に一つの成果を生み出す事となる。

 とある男が見つけ出した、人類に新たなる階層を示す因子。それは発見者により『馬鹿げた 世界に 文句を言う(Zany Universe Nag)』因子、略語化してZUN因子と名付けられた。余談ではあるが、発見者はこの偉大なる成果を達成した時、泥のように酔い潰れていた状態であったとも言われている。彼と酒との切っても切れない関係にまつわる逸話は、それこそ枚挙にいとまがないのだが、多くは後年に彼が余りにも偉大である為にでっち上げられたものと思われる。確かな事実は一つ、彼が人類に新たな世界を指し示したと言う事だ。

 ZUN因子。これにより人類は世界に穴を穿ち、自らの望むままに変容させる事が可能となった。最早人は鳥籠に閉じ込められる事はないのだ。輝かしい世界が、人類の行く末に広がるように思えた……

  ◆  ◆  ◆

 幻想郷内、博麗神社。その社内にある居間で、炬燵に肢体を突っ込んだままゴロゴロと蠢く影が二つ。この神社の巫女である博麗霊夢と、その友人である霧雨魔理沙だ。春の陽気がすぐそこまで迫っているというのに、未だこの神社は炬燵を片付ける事が出来ないでいた。げに恐ろしきは人を吸い寄せる炬燵の魔力と言うべきか。

「霊夢ー、今日の夕餉はなんだー」

 炬燵の暖かさで微睡みかけながら、魔理沙が呟く。

「まだ考えてないわ。って言うか何であんたがうちの晩御飯を気にするのよ」

 神社の台所への魔理沙の問いに、心底気だるそうな面持ちで霊夢が答える。

「そりゃ気にするだろ。嫌いなものが出たら事だからな」

 夕食をご馳走になるのはさも当然の事のように霊夢へ告げる魔理沙。その表情には一片も悪びれた様子はない。

「ここで食べていく気満々とは恐れ入るわ。好物が食べたかったら家に帰って好きなだけ作りなさいよ」
「断る。炬燵から抜け出すなんて真似、私には出来そうにないからな」
「人に作らせておいて自分は炬燵で温々なんて真似は出来る癖にね。百歩譲って食べてくのは良いとしても、せめてあんたが料理作りなさいよ」

 これ以上拒んでも碌な事にならないと判断した霊夢が、せめてもの折衷案で決着を付けようとする。

「この神社は客人に料理を作らせると言うのか」
「呼ばれもせずに勝手に現れる奴は客人と呼ばない」
「呼ばれもせずに勝手に現れるスキマ妖怪は確かに客とは呼べそうにないな」

 あくまで不貞不貞しい魔理沙の態度。別にこの態度は今に始まった事ではないのだが、それでもやはり嘆息ものである。実際霊夢は「はぁ」と一つ溜息をつくと

「事ここに至っては最早問答無用。弾幕ごっこでけりを付けましょう。負けた方が夕餉の準備をする事」と魔理沙に告げた。

  ◆  ◆  ◆

 霊夢がするりと境内に歩み出ると、全身より淡い赤色の光が立ち上る。すると霊夢は歩み出たそのままの勢いで、大空へとふわりと飛び立った。人が何の道具も使わずに空を飛ぶ。かつての、物理法則が支配する世界ならば決して有り得なかった、それこそ幻想としか思えない光景だ。この様な所行を可能としたのも、霊夢の体内にあるZUN因子の力である。先程霊夢より立ち上った淡い光は、その力を行使している状態の表れである。

 ZUN因子を体内に保有するものは、その力により世界を自らの思うままに書き換える事が出来る。この場合、霊夢は自分の周囲にある空間を『人が自由に空を飛ぶ世界である』と書き換えながら空を突き進んだのだ。そして霊夢の恐ろしい所は、その置換現象を『無意識』で行える事にある。
 本来ZUN因子の保有者は、望む世界を心の内に強く想像し、それを外界へと投影する事で奇跡を起こす。その際に起こる奇跡の大小は、単純に体内に存在する因子の量に比例する。しかし類い希な量の因子を保有する『博麗の巫女』である霊夢の場合、普通の人間が意識せずとも心臓を動かせ、深く考えなくとも地を走れるように、『空を飛ぶ世界』に専心する必要はなく、極めて自然な『何でもない事』として空を飛ぶのだ。これはこの異能者揃いの幻想郷でも、彼女だけが行える事である。

 霊夢が空へと飛んでいった事を見届けると、魔理沙もその後を追うべく愛用の箒を手に取る。全身に気力を漲らせ、力を行使すべく精神を研ぎ澄ます魔理沙。人がそれぞれ異なる遺伝子を持つように、力を行使した際の表れもまた多彩である。魔理沙の場合、仄かな闇が彼女の全身を取り囲んだ。
 そしてそれに合わせるように、彼女の箒が狭い檻から解き放たれた獣のような力強い唸りを上げる。魔理沙の箒、この箒は彼女の友人が作り上げた特別製であり、内部にZUN因子増幅回路(Zany Universe Nag Factor Amplify Circuit)が仕込んである。このZUNFACが駆動し魔理沙が持つ因子の量を増幅する事で、霊夢に比べ格段に劣る量の因子しか保有していない彼女でも、霊夢以上の速さで思うがまま自在に空を駆ける事が可能になるのだ。

 神社上空で睨み合う両雄。周囲に漂う凛とした緊張感。傍目には晩御飯を賭けての勝負とは到底思えない。
 そんな針で刺すような空気の中、先手を取ったのは魔理沙であった。

「先手必勝華麗奔放! 魔符、スターダストレヴァリエ!」

 声高にスペルカードを付きだし、その名を宣言する魔理沙。それに続いて彼女は、自らの心象に今でも強く残る流星祈願会を思い浮かべる。スペルカードはあくまで弾幕を想起する為のトリガーに過ぎない。視界を覆い隠す弾の群れという、本来あり得べき筈のない状況を引き起こすのは、やはりZUN因子の力なのだ。そして魔理沙の場合、かつて観た夜天を埋め尽くす程の流星を、因子の力を用いる事で眼前の現実世界へと投影した。
 神社の空を世界法則ごと鮮やかに塗り替えて進む、色取り取りの綺羅星。その目まぐるしい程の星の群れを、霊夢は激突寸前の紙一重で、しかしどこか優雅な雰囲気を醸し出しながら躱していく。少しでも霊夢が自らの『世界』を疑えば、たちまち彼女は体の制御を失い、星々の流れに飲まれてしまう事だろう。自らの理想と心中する。それが弾幕ごっこに勝利する為の秘訣だ。
 とは言え霊夢がその気になれば、魔理沙の弾幕ごと世界を書き換える事も可能ではある。しかし彼女は決してその方法をとる事はしない。これはあくまで『ごっこ遊び』、互いにルールに従って遊ぶからこそ楽しいのだ。ルールを逸脱した遊びなどは無粋の極みである。
 しかし、このまま躱し続ける事も辛くなってきたのも事実。先程よりどんどん流星の密度が濃くなり、今にもその星の顎門が彼女を飲み込まんと襲いかかって来る。

「中々やるわね魔理沙。けど派手に輝くだけが弾幕じゃないって事を教えてあげるわ。後手決勝簡明率直! 散霊、夢想封印 寂! 」

 霊夢のスペルカード宣言に伴い、彼女の周囲に顕現する大量の破魔札。そしてその札がまるで意志を持つかのように魔理沙を目掛けて飛んで行く。
 互いを標的とした結果、必然的にぶつかり合う流星と破魔札。それぞれの心が創り出した像の鎬合いは、両者の中央で膠着状態へと陥った。時が止まってしまったのかのように動きを止める両者。心は全て、自らが信じる勝利の形へと注力し続けている。

 しかし時が経つにつれ、拮抗状態は徐々に破られようとしていた。魔理沙の負けという明確な形を持って。
 両者の力が拮抗すれば、最後にものを言うのは地力の違い。霊夢と魔理沙は、そもそも保有する因子の絶対量からして異なる。それに加えて魔理沙は箒の制御にまで心を配らなければならない為、その差が如実に出てしまったのだ。

「決まりね魔理沙。流星はいつか地に落ちるものだわ」
「ちっ! この私がパワーで押し切られるなんて冗談にもならんぜ!」

 苦々しげに呟く魔理沙。このままではジリ貧で負けは必死。ならばどうするべきか? そんなものは悩むまでもなく決まっている。弾幕はパワーだぜ!

「だったら打つ手はこれっきゃないよな!」

 そう叫ぶと魔理沙はレヴァリエの投影を解除。破魔札は組み合っていた邪魔な流星が消えた事で、本来の目的を果たすべく一目散に魔理沙へと迫り来る。しかしそれこそが魔理沙の狙い。魔理沙には破魔札が自分に激突するまでの、わずか一瞬の時間があれば充分だった。そう、ミニ八卦炉を抜き撃つだけの時間があれば。

「いくぜ必殺ッ! 恋符、マスタースパーク!」

 魔理沙は素早く引き抜いたミニ八卦炉を、飛来する札の群れへと構える。

 ミニ八卦炉、その開発者によって与えられた正式名称は『八卦型超巨大多次元稼動式縮退炉ver.M』と言う。その名が示す通り、この炉の本体は多重次元にまたがる超巨大な炉だ。現在目に見えている、掌に納まる程のミニ八卦炉は、炉に因子を放り込み、その結果発生する多大なる出力を引き出す為の扉に過ぎない。
 八卦炉の実像。それはあらゆる事象を表す八卦、それにより幾重にも重なる複数の次元を貫く恐ろしく巨大な炉を形作っているのだ。そしてその炉心として内部に収められている縮退物質に、ZUN因子の力を持って生成された幻想質量を放り込む事で、世界を揺るがす膨大なまでのエネルギーを引き起こす。その性能は人一人分の質量があれば、山をも吹き飛ばす程の熱量を生み出す事が出来ると言う凄まじいもので、本来ならば少女の手には到底余る代物だ。

 そして今、魔理沙はその手に握る多次元への扉を開くべく、ZUN因子という鍵を差し込んだ。
 引き起こされる目も眩むような閃光と、膚がひりつく様な熱気。その無限の動力炉から放たれた光と熱の奔流は破魔札全てを飲み込み、その勢いを何ら減少させることなく霊夢をも取り込んでいった……

  ◆  ◆  ◆

「いやー勝負に勝った後に食う飯は美味いな! それがタダ飯なら尚更だ!」

 快活に言い放ちながら、遮二無二に食事を頬張る魔理沙。因みに今晩の博麗神社の献立は白飯、大根の味噌汁、鰆の西京漬け焼きにわらびの一本漬けと典型的な一汁一菜である。

「誰がロハで食わせると言った。人に作らせたんだから、せめて代金ぐらいは払いなさいよ」

 魔理沙の物言いに憮然たる面持ちで言い返す霊夢。しかし不満そうなその態度とは裏腹に、手にしたその箸は止まる事をしない。

「私は客人じゃないからな、料理に代金を払う義務なんて無いぜ」
「減らず口を」

 互いに撃ち合った後だというのに、それでは不足だったとでも言わんばかりの舌戦。言葉という弾丸を飛び交わせる霊夢と魔理沙は、互いに憎まれ口を叩きながらもその顔はどことなく楽しそうだ。
 そうして、口から弾を飛ばしながらも一方では食べ物を詰め込むという、常人は真似しようともしない高度な技術を披露しながら、両者の夜は段々と深けていった。

 彼女達の日常は不変にして流転。唯々自らの思い描くように、それでいてその場の勢いに任せて日々を生き続ける。この幻想郷とはそう言う場所なのだ。少なくとも彼女達はそう思っているだろう。

  ◆  ◆  ◆

「今日もいつも通り、だったようね」

 幻想郷の守護者、八雲紫。彼女は夜空に煌々と輝く満月を背に神社を見下ろすと、そう呟いた。
 八雲紫、種族はYOUKAI(Yonks Unique kaleidoscopic Artificial Intelligence:久遠の間 唯一無二でありながら 千変万化の性質を持つ 人工 知性体)。造物主により創り出された存在である彼女は、与えられた命題であり、彼女の存在意義でもある『幻想郷と人類の保護』と言う使命を遂行し続ける。外の世界を復興しうる手段が誕生するまで。

 そう、この幻想郷の外には最早、人類の繁栄が残した残滓しか存在していないのだ。かつて人類が偉大な発見の末に登り詰めた階層、その果てに人類が得た力は余りにも凄まじく、そして早すぎるものだった。人類は自らの愚かさ故に、大地のことごとくを灰燼に喫してしまったのだ。
 惑星中を覆い尽くした未曾有の破壊。そこからかろうじて逃れた人類も確かに居た。しかし星自体が、彼らが繁栄するのは不可能な程に死に絶えてしまっていたのだ。それ故、彼らは閉じこもった。自分たちが持つ最後の力を振り絞り、幻想の世界を創り出したのだ。そして彼らは幻想世界の守護を自らが生み出した人工生命に任せ、遥かに遠き未来に再び広大な世界へと乗り出す事を夢見て、永久の眠りに着く事を決めた。これが幻想郷の誕生、そのあらましである。

 この世界は揺り籠で眠る胎児が観る泡沫の夢。胎児はいつの日か目覚める事を信じて眠り続けるだろう……

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学


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鈴月

Author:鈴月
初めまして、鈴月(すずつき)と申します。最近になって東方に嵌った俄です。
ここではCoolier-クーリエ-東方創想話に投稿した作品のまとめ等を行いたいと思っています。

the.bell.moon○gmail.com
何かありましたら上記の連絡先までお願いします。
(○を@に変えて下さい)

Skype ID:suzu_tuki

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