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ゼロ年代SF傑作選 簡易感想

 「ゼロ年代」の名が示す通り、2000~2009年においてその名を馳せたSF作家陣の傑作短編を集めた作品集です。参加した作家名とその代表作は次のようになっています。

秋山瑞人/代表作 『E.G.コンバット』 『イリヤの空、UFOの夏』
冲方丁/代表作 『マルドゥック・スクランブル』 『カオス レギオン』
海猫沢めろん/代表作 『左巻キ式ラストリゾート』 『零式』
桜坂洋/代表作 『よくわかる現代魔法』 『All You Need Is Kill』
新城カズマ/代表作 『サマー/タイム/トラベラー』 『15×24』
西島大介/代表作 『アトモスフィア』 『ディエンビエンフー』
長谷敏司/代表作 『円環少女』 『戦略拠点32098 楽園』
元長柾木/代表作 『全死大戦』 『ヤクザガール・ミサイルハート』

 以下に特に心に残った短編のあらすじと感想をば。

冲方丁 『マルドゥック・スクランブル“104”』
 マルドゥック・スクランブル――マルドゥック市が独自に採用する、人命保全の為の緊急法令。その法案適用時には禁じられた科学技術の使用が許可される。
 人語を喋るネズミ、ウフコック。軍人くずれの鉄面皮、ボイルド。禁じられた技術の結晶である二人は、自らの有用性を証明し続ける為、引いては自らの居場所を勝ち取る為に今日も街を駆ける。


 企業の内部告発を行った結果、命を狙われる事になった女性を護る為に闘うウフコックとボイルド。彼らを描いたアクションシーンが物語の中核を為しています。重火器を手にドンパチやり合う様はハリウッド映画のよう。敵が籠城先のホテルに攻め込んでくる為に取った、まるで冗談のような手段も物語のハリウッド性を高めています。
 創られた存在であるにもかかわらず、誰よりも生きる事に前向きなウフコックが印象的でした。と言うかウフコック可愛すぎ!
 『マルドゥック・スクランブル』本編とは微妙に繋がっているようでパラレルだと思います。


海猫沢めろん 『アリスの心臓』
 脳神経が<リワイヤード>されている影響で、音を立体と質感を以て『観る』事が出来る少年、野角計。彼が田舎へと転校してきて、とある少女と出会った事から物語は始まる。
 作者曰く『量子的なエロ本の5次元世界に神が降臨してボーイミーツガール』

 
 野角少年の見る世界を描いた文章が非常に独特です。『太鼓の音がのっぺりとした白い多面体になって空に浮かんでいる。どんどん、月が増えていく。空はクリームあんぱんでいっぱいだ。』なんて文章どうやったら思いつくんですか。
 それ以外にも文中にとんでもない仕掛けがあったりします。
こんな感じ
 こんなぶっ飛んだ表現方法、『虎よ、虎よ!』以来ですよ!
 ただちょっとアイディアだけ先行して読者が置いてけぼりになっている感は否めないですね。


長谷敏司 『地には豊饒』
 脳内のナノロボットにより『本来は使用者の脳内に無い神経連結』を創り出し、他者の経験や感情までもを伝達させる技術ITP。本短編では、そのITPを日本人向けに開発する技術者・ケンゾーを通し『文化という特定の土地や人間性に根付いた基盤は、これからの宇宙進出に対し足枷にしかならないのか?』『文化という他人との繋がりに縋らない人間は本当に人間と言えるのか?』と言う問いを投げかける。


 これぞSF! といった感じの硬派な内容になっております。文化という個々人の拠り所は、宇宙という余りにも大きな舞台に持ち込むには本当に不要なものなのか? 深く考えさせられます。
 ラストシーンの美しさは今作品集随一だと思いました。

テーマ : 感想
ジャンル : 小説・文学


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鈴月

Author:鈴月
初めまして、鈴月(すずつき)と申します。最近になって東方に嵌った俄です。
ここではCoolier-クーリエ-東方創想話に投稿した作品のまとめ等を行いたいと思っています。

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何かありましたら上記の連絡先までお願いします。
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