スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

web拍手

嘘をもうひとつだけ

分類:霧雨魔理沙 森近霖之助 掌編
 
 
 何故こうなってしまったんだろう。最初は酒の上での他愛もない冗談だった筈なのに。

  ◆  ◆  ◆

 元はと言えばあいつと二人で飲んでいる中、急に会話が止まった事が原因だった。偶にあるだろう? 皆の会話の「間」が重なって、話題が停滞してしまう時が。その時も丁度そんな感じだった。そして結局、その無言の気まずさに耐えきれなくなった私が、何とか空気を変えようとして

「そ、そう言えば知ってたか!? どっかの古道具屋の店主がお前の事気になってたぜ」

 と適当な嘘を言ったんだ。何でこんな嘘をついたのかは、今になって冷静に考えてみても判らない。ただあの時は、どうしようもなく居心地の悪い空気に風穴を開けようと必死だったんだ。
 私は最初、その話題では余り盛り上がる事も無いだろうし、せめて次の話の種が出るまでの繋ぎにでもなれば良いと思ってた。それなのにあいつと来たら、急に私の話に食いつくものだから驚いたぜ。やれ、香霖の趣味は何だの、好きな食べ物はあるかだの、矢継ぎ早に質問してきたな。まるで前々から聞きたい事を準備していたみたいだったぜ。
 それで私はと言うと、あいつの質問攻めに何だかウンザリして、酔いも醒めてしまったのを感じた。だから

「そんなに知りたかったら自分で聞きに行くんだな。そうすりゃあいつも喜ぶだろうぜ」

 とまるで捨て台詞のように呟くと、早々に帰路に着いたんだ。


 あいつと飲んだ次の日、私は何とはなしに香霖堂に顔を出した。昨日ああ言った手前、あいつが香霖堂に乗り込んで来る可能性もあったからな。そうすれば、昨日の事は冗談だった、急に帰って悪かったとあいつに言う事も出来るだろうし。
 ただ私にとって予想外だったのは、私が店に入った時、あいつが既に店内に居たって事だ。それも香霖と心底楽しそうに話しながら。
 それで私が思わず「何やってるんだ?」と聞くと、あいつは私が今まで見た事もないような満面の笑みでこう言ったんだ。

「ありがとう魔理沙、貴女のおかげよ」

 その時の屈託のないあいつの顔は、今でも私の脳裏に焼き付いて離れない。

  ◆  ◆  ◆

 今じゃ私は香霖堂には顔を出さない。行けば必ずあいつの笑顔を見る事になるからだ。あいつが浮かべる例の晴れやかな笑顔を見る度、私の心は何故だか暗く曇る。あいつの事は嫌いじゃなかったはずなのに、どうしてこんな気持ちになるのかは判らない。私に判るのは、私は何か大切なもの、を無くしたんだろうと言う事だけだ。何故こうなってしまったんだろう。何故こうなってしまったんだろう……



そうして彼女は嘘をつく、自分の心に。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学


web拍手

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

嘘をもうひとつだけ 東野圭吾

バレエ団の事務員が自宅マンションのバルコニーから転落。 同じマンションに住む元プリマ・バレリーナのもとに一人の刑事がやってきた。 彼...

コメントの投稿

非公開コメント

No title

こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
プロフィール

Author:鈴月
初めまして、鈴月(すずつき)と申します。最近になって東方に嵌った俄です。
ここではCoolier-クーリエ-東方創想話に投稿した作品のまとめ等を行いたいと思っています。

the.bell.moon○gmail.com
何かありましたら上記の連絡先までお願いします。
(○を@に変えて下さい)

Skype ID:suzu_tuki

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Twitter Updates
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。