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検索せよ無限のArchive!記憶という海へとDive!

分類:森近霖之助 短編 パロディ
 
 
「おーい香霖、居るかー」

 麗らかな日差しの午後、悠然と読書に没頭しながら夢と現の狭間を漂わんとしていた僕の意識は、その一言と共に香霖堂に飛び込んで来た魔理沙によって急激に現実へと引き戻された。

「居た居た。ま、出不精な香霖がこの店に居ない方が珍しいか。此処にばっか引き籠もってないで偶には外にも出ないと体が固まっちまうぜ?」

 人の顔を見るなり開口一番不躾な事を言い放ってくる魔理沙。大体僕は出不精なのでは無い。店の外には僕が興味を引かれる事象がさして存在しない、それ故に外に出る事を無駄と見なしているだけだ。僕が真に心惹かれるものは文字通り『外』に有るだろう。全く、無駄を省いた効率的な生き方をしているのに出不精呼ばわりされるのは甚だ不愉快ではある。そう魔理沙に対して苦言を呈しようとした所、僕の視線は彼女が手にしたものに釘付けとなった。

「お、流石道具にだけは目敏いな香霖。私が髪型を変えても一向に気が付かなかった癖に」

 魔理沙が髪型を変えた? そう言えば彼女がやけに此処に入り浸っていた時期があった様な……思い返してみれば確かにあの時の魔理沙はトレードマークである黒い帽子を被っていなかった。その為妙に感じた気もするが……まぁ今は過ぎ去った事に心を捕らわれていても仕方が無い。それよりも彼女が持つ道具の話だ。

「見た所単なるガラクタの様だが……まぁ折角持ってきたのだし持って帰るのも何だろうからその辺りに置いていくと良い」
「おっと手には乗らないぜ香霖、私にだってこの道具が外から来たものだってぐらいは判る」

 あわよくばとは思ったが其処は流石に道具屋の娘、彼女の鑑定眼は節穴ではなかったか。この事を口に出すと魔理沙は途端に不機嫌になるので胸に留めておくが。

「ま、そうは言っても私では『外の世界の道具である』と鑑定するのが精一杯でな。かといって知らないものを知らないままにしておくのは私の性分じゃあ無いし何より寝覚めが悪い。そこで何とかしてこいつの正体を見極める手段はないものかと頭を捻った所香霖の能力の事に思い至った次第だ」

 僕の持つ力『道具の名前と用途が判る程度の能力』、確かにそれを使えばこの道具の正体を定める事は容易いだろう。

「と言う訳でささっと鑑定してくれないか、結果如何によっては香霖にプレゼントしても良いからさ」

 全く、それは使えない物だったら僕に押しつけるという意味だろう。大体元は拾いものだろうに、それをプレゼントと言い張るのは如何なものか。
 それはそれとして彼女が僕に手渡した道具、それは確かに一見しただけで今の幻想郷の技術では到底作り得る代物ではなく、紛れも無く外の世界のものだと確信出来る道具だった。外見は掌程の大きさで細長い板の様な形状、そして片側の表面には格子状に区切られた部分があり、それぞれの格子にアラビア数字で0から9までの文字、それと何か見慣れない記号が刻印されている。フムン、0から9までの数字が刻まれている箇所等は昔無縁塚で拾った『黒電話』に似通った部分があるが、それにしては大きさ、形状が違いすぎる……

「何頭捻ってるんだよ香霖、ささっと能力使えば一発で判るもんじゃないのか?」
「風情というものを理解していないな魔理沙。こういった時はまず自分の知識を用いて知恵を絞り結論を模索する、その課程が愉しむのが正解というものだよ。何事も結果だけを追い求めるようでは味気ない生き方というものだ。それが理解出来ない辺り魔理沙もまだまだ子供という事か」

 とは言ったものの、余り魔理沙を待たせるのは得策では無い。いざこの道具の正体が判明したとして、それが是非僕の手元に置いておきたい物だった場合、彼女を何とかして説得しなければならなくなる。そこに至るまでに余り不用意に彼女を刺激していては交渉の際に支障を来す可能性があるからだ。故に僕は自らの愉しみもそこそこに道具に対して『能力』を使うべく精神を集中させた。
 僕の能力『道具の名前と用途が判る程度の能力』、実を言うとその呼称は僕の力の本質を正確に捉えているとは言えない。何故ならば僕の能力の真価は対象となる物体の『記憶』を探る事にあるからだ。名前と用途が判るのはあくまで記憶を垣間見た副産物でしかない。この事実は未だ嘗て他の誰にも明かした事は無い。真の実力者は自らの力量に関して饒舌に語るものでは無いと理解している故にだ。
 さて、専心を以て道具の記憶を探ってみた所、道具が辿ってきた記憶、その断片が朧気ながら脳裏へと徐々に浮かんで来た……

  ◆  ◆  ◆

 気が付くと僕の体は先程まで居た香霖堂とは全く違った世界へと降り立っていた。正確には僕の精神があの道具の『記憶』を追体験しているだけなので別の『世界』という言い方は大仰なのだが。
 改めて周りを見渡すと、目の前にはとある男が歩いている。年の頃は30かそこらと言った所だろうか。纏っている衣服からしてどうやら外の世界の人間で間違いなさそうだ。見た所なにやら慌てている様だが……すると突然その男は例の道具を懐より取り出すとそれを顔に向けて押し当て、そしてその状態のまま誰もいない空間へと向かって喋り始めた。

「先程は通話が途中で途切れてしまい申し訳ありません。何せ突然電波が届かなくなってしまったもので……それで例のメモリの件なのですが……」

  ◆  ◆  ◆

 此処で僕の意識は元居た香霖堂へと舞い戻ってしまった。僕のこれまで得てきた経験からすると、どうやら物体が記憶しておける要領には限界があり、その限界は物体の質量に比例している様なのだ。よってこの様に小さな道具ともなると蓄積している記憶もそれ相応のものになってしまう為、探れる情報もあのような断片になってしまう。
 だがしかし僕程の者とも成れば今垣間見えた寸瞬の映像でも十分な情報が得られる。寧ろ此処からが僕の能力の真骨頂となるのだ。先程僕は『物体の記憶容量はその物体の大きさに比例する』と述べた。つまり逆を言えば膨大な質量を持つ物体の記憶を探る事が出来れば、其処には桁外れの量に上る情報が眠っていると言う理屈になる訳だ。最も身近な位置に有りながら他の何よりも膨大な質量を持つ物質。それは僕らが立つ『大地』、即ち『地球』に他ならない。僕は地球の持つ記憶を探るべくその双眸を閉じ、自らが立つ大地の奥深くに向かって精神の根を伸ばし始めた。

  ◆  ◆  ◆

 再び僕が目を開いた時、僕の体は先程道具の記憶を垣間見た時と同じ様に別の世界にあった。只、先程の世界と決定的に違うのは、僕の眼前には見渡す限り本棚の海が広がっていると言う点だ。話に聞いた七曜の魔女が所持する大図書館の蔵書群でさえ此処に存在する本の数には到底及ばないだろう。しかも此処に有る本の内容は只の活字の羅列等では断じて無いのだ。この世界に眠る本の一つ一つには、地球創世より大地の上で発生してきた事象が記憶として閉じ込められている。つまり本を読み解く事でありとあらゆる事象についての知識を得る事が可能となるのだ。
 これは僕の想像なのだが、個々の記憶がそれぞれ本の形を取って存在しているのは、この世界を利用する僕自身が本こそが情報を読み取るのに最も適した形状と思っているからではないだろうか。その形状についての事柄も相まって、僕は個人的にこの記憶という本の海で満ちた世界の事を『地球の本棚』と命名している。
 さて、幾ら有り余る程の情報が有ったとて、そこから真に自分が必要としているものを掴み取れなければ意味が無い。事此処に至って漸く道具より得た情報が生きてくる訳だ。

「さぁ、検索を始めよう。キーワードは『通話』『携帯』『電波』だ」

 僕がこう呟くと、無限とも思われる本の群れが目まぐるしく動き、次第にその数を減らしていく。数瞬後、僕の目の前に残ったのはたった一冊の本だけとなった。僕はその本を幼子を扱う様にも似た手付きで丁寧に掴むと、おもむろに知識の扉を開いた……

  ◆  ◆  ◆

「判ったよ魔理沙、この道具の名称は『携帯電話』、用途は『離れた位置にある他の電話を持つ者と話す』こと。要は他の電話が無ければこの道具単体では無意味って事だね。どうする? 持って帰るかい?」
「う、うん? そうだな……折角だから此処は香霖にプレゼントするぜ! いやー、何せ貴重な物だから手放すのは惜しいんだが香霖には普段から世話になってるしな! ウン!」

 そう言うと魔理沙はばつが悪そうにそそくさと香霖堂を後にした。全く、要らないならば要らないと素直に言えばいいものを……その負けず嫌いの性格が何時か大きな災難を呼び寄せないかが心配だ。とは言え魔理沙の事だ、どんな苦難も素知らぬ顔で飛び越えてしまうのだろう。僕の憂慮など大きなお世話だと言わんばかりに。


 騒音の元凶が居なくなり、再び静寂を取り戻した香霖堂。僕はその森閑の中で一人『地球の記憶』についての考察を巡らせる。あの本棚には『外の世界』について万巻の書が存在する。だが驚くべき事にこの幻想郷についての書さえも存在しているのだ。以前試しに幾人かの書を覗いて見た所、その中には各人の名前、能力等々が事細かに記述されていた。この事実が何を意味するか? 『情報を制するものは全てを制する』という至言が有る。その言葉が示す通り、全ての事象を知り得る事が出来る僕こそがこの『世界』全てを制する事が可能となるのだろう。それを考えれば草薙の剣に認められる日もそう遠くはないに違いない。
 だがその為には問題が一つ。知識はそれだけが有ってもさしたる意味を持たない。経験を伴って初めて自らの血肉となるのだ。今の僕は頭に綿を詰めすぎた結果、不格好になってしまった人形のようなものだ。結局の所、僕が全てを制する為には何としても『外の世界』に赴き、蓄えた綿を全身へと巡らせなければならないという事だ。
 まぁ、焦らずともいずれ機会は巡ってくるだろう。今は只来るべき世界を見据え、知識を蓄えながら素直にその時を待とう……そう、何事も結果だけを追い求めるようでは味気ない生き方というものなのだから。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学


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No title

おぉ、こんな面白い作品を見逃していたとは。
長編のプロローグとしても行けそうですねw
霖之助がライダーというのも、面白いかもしれないと思ったり。

No title

読了感謝です!
長編としてここから話を膨らませようと考えた事もあるのですが、どうにも上手くいかずに放置状態になってしまいました。
霖之助の変身は、あんな彼と相乗りしてくれる相棒が見付かるかどうか、それが一番の問題ですね。
プロフィール

鈴月

Author:鈴月
初めまして、鈴月(すずつき)と申します。最近になって東方に嵌った俄です。
ここではCoolier-クーリエ-東方創想話に投稿した作品のまとめ等を行いたいと思っています。

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