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Circle of Life

分類:霧雨魔理沙 フランドール・スカーレット 短編
 
 
――以下、霧雨魔理沙の日記帳より抜粋――

   ◆   ◆   ◆

3月6日
 今日も引き続き新しい魔法の実験。今の所触媒生成の反応は順調。この分なら一週間もあれば結晶化までは終わるだろう。


3月7日
 順調だった反応が少しずつ減衰してきた。色々と手は尽くしてみるが結果はいまいち。取り敢えず手持ちの魔導書だけでは有用な対処が出来ない。明日にでも図書館に行って良さそうな本を見繕ってこよう。


3月8日
 紅魔館に乗り込んで目当ての本を借りてきた。その際、何だかんだあって館中を追われながら逃げ回る羽目に。私はあくまで借りてるだけだというのに、人を信用しない哀れな奴らだ。これこそ人でなしってやつだな、実際人じゃないが。
 それであの馬鹿でかい館の隅から隅へと走り回った結果、私が逃げ込んだのは地下室、それもあの吸血鬼の妹君が寝床としていた部屋だった。幸いおてんばお嬢様は眠っていたらしく、私がドタバタと部屋に入り込んでも寝ぼけ眼で見逃してくれた。フランに会うのは以前の弾幕ごっこ以来なので即座に攻撃されることも覚悟していたのだが、前のようなぎらついた目を向けられることもなく一安心。おかげで私はほとぼりが冷めるまで無事に隠れることに成功、今度フランに会ったら礼を言っておこう。

 帰宅後は本を参考にして実験の再開……のつもりだったが、予想外の鬼ごっこで疲れてしまった為翌日に延長。本を開くこともなく就寝する。


3月9日
 目が覚めたら太陽が既に天高くに昇っていた。明らかに寝過ぎだ。

 気を取り直して実験の再開。本によると、どうやら私の手法では触媒の材料となる物質の純度が問題となるらしい。手持ちの材料では純度が不足していた為、どこからか新しい物を探してこないと。どこかの魔法使い宅とか古道具屋とかに転がってないだろうか。

 取り敢えず自宅での実験は一旦休止。明日は材料集めに専念するとしよう。


3月10日
 まずは近くにある香霖堂へと足を運んだ。が、目当ての物は見つからず。余計な物はごちゃごちゃと置いてある癖に、肝心な物が置いていないとは、全く香霖らしい店だといつも通りのことながら感心する。ついでにいつもの余計な長話までされそうになったので、さっさと退散してきた。

 その後アリス宅へとお邪魔。探している物について話をすると、丁度手持ちがあったらしく快く譲ってくれた。八卦炉を無駄に使わなくて済んだのでアリスの優しさに感謝。
 更にはささやかなお茶会も開いて貰い、紅茶をご馳走になってきた。いつも通りの美味しいお茶、全く以て感心する。暫くアリスと他愛ない話をした後、帰宅。

 帰宅後は手に入れた材料を炉に放り込み、反応を確認。今度こそ結晶化まで行くはずだ。


3月11日
 反応は順調に進んでいる。順調に進むのなら、必然的にそれを見ている私は手持ち無沙汰となる。そんな訳で暇を持て余した結果、先日の礼をしようと思い付き紅魔館へと行ってきた。

 門番やメイドの目をかいくぐって地下室に忍び込むと、フランは相変わらず寝ていたようで、この間と同じように寝起き独特の虚ろな目をしながら私を迎えてくれた。
 先日も今日も寝ていたと言うことは、吸血鬼はやはり昼間は寝る時間なのだろうか。今度別の吸血鬼に会ったら聞いてみようかとも思う。と言っても、他のやつなんてこの幼い吸血鬼の姉くらいしか知らないが。

 フランに先日の礼を告げると「そんなことあったっけ?」との返事。まぁ、寝ている所に勝手に乗り込んで来て隅っこでじっとしていただけなのだから、気が付いてなくとも仕方が無いだろう。取り敢えずフランへのお礼として持参した菓子をあげると「血が入ってないお菓子なんて珍しい!」と喜んでくれたのは幸いだった。今度からあの館の菓子をつまみ食いするのは控えておこう。

 最後に部屋を出る時、笑顔で「また来てね!」と言われた。実験が問題なく進むなら暫く暇になるはずなので、また顔を見せるのも良いかもしれない。


3月12日
 反応が減衰することもなく続いている。なので今日はフランに会いに行ってきた。

 昨日と同じくらいの時間に部屋に入ると、フランは既に目を覚ました後だった。もしかして単に生活リズムが乱れているだけ? まぁ生活リズムの乱れっぷりに関しては私には何も言えないのだけど。

 その後はフランとお喋りや簡単なカード遊びをして暇をつぶす。弾幕ごっこに付き合わされなくて良かった。前みたいな派手な遊びはいくらコインがあっても足りない。コンティニューにも限度がある。

 帰りがけに私に投げかけられたのは、昨日と同じ笑顔。そして「昨日も今日も、会いに来てくれてありがとう!」の言葉。思わず目頭が熱くなったのはここだけの秘密にしておこう。


3月13日
 実験は代わり映えがないくらいに順調だ。だが実験以上に気掛かりなことが出来た。自分の頭を整理するついでに今日のことを書き記していこうと思う。

 昼間、私はいつものように紅魔館に忍び込み、いつも通りの時間にフランの部屋を訪れた。そして今日も目を覚ましていたフランに挨拶をすると、フランは昨日までと何も変わらない無邪気な表情で「あなた誰?」と私に告げた。
 最初、私はフランが冗談でも言っているのだろうと考えていた。連日顔を見せた甲斐あって冗談さえ言い合えるようになったとさえ。
 しかしその直後、考えが間違っていたことを思い知らされた。何しろそこには初めて会った時にフランが浮かべていたあの表情、ぎらついて殺気だった目が私を見据えていたのだから。
 その時受けた衝撃を、これを書いている今になっても忘れられない。昨日まで私に微笑みかけてくれていたあの愛くるしい表情が、まるで別人にすり替わっているのだから。
 いや、別人という表記は正しくない。確かに今まで私に向けられていた態度から考えると別人と思いたくなるのだが、フラン自身のあの殺気に満ちた目線は、最初に私と弾幕ごっこをした時と何ら変わっていないように見受けられたからだ。そう、私との交流に関する『記憶』だけがすっぽり抜け落ちていると言う表し方が最適だと思う。

 結局その後、私は逃げるようにあの部屋を後にしてしまった。


3月14日
 全ての謎が解け、そして私は絶望に包まれている。昨日のようにつらつらと書いていれば少しは自分の心も落ち着いてくるだろうと考え、今この文章を書いている。

 私は昨日恐怖に駆られ逃げ出した館に、ここまで首を突っ込んだならば事の詳細までも知っておくべきだと自らを奮い立たせ、再び足を向けた。但しその足が辿り着く先は地下ではなく、フランの姉であるレミリアの元だ。フランをあの地下に幽閉した主犯であるレミリアならば、全てを知っているはずだと考えたからだ。

 予想通り、レミリアは全てを知っていた。私の知りたかったこと全てを。私の疑問に対して、まるで用意していたとでも言わんばかりにレミリアが答えを返してくるその風景は、それこそ運命という見えない糸に操られている人形劇を演じている気がした。

 レミリアの話を簡単に要約すると、フランは『四重人格』なのだそうだ。とは言っても単純に四つの人格がフランの中にあるのではなく、『四つの独立した記憶領域』がフランの中にあるらしい。

 人格とは、個人そのものとしての特性だ。そしてその一人一人異なる特性が一体どのように形作られるかと言えば、それは連続した経験の積み重ね、つまりは記憶だ。記憶の恒常性が保たれているからこそ、その記憶を有しているものの人格が保たれていると言って良い。
 しかし、フランは違う。フランの場合、記憶が連続しないのだ。一つの記憶を持ったフランが眠りにつくと、別の記憶を持ったフランが目を覚ます。その四つの記憶のサイクルが、今のフランを形作っているのだ。
 だからあの時フランは「昨日も今日も、会いに来てくれてありがとう!」と私に言った。あのフランにとっての『昨日』とは私にとっての『四日前』、即ち私が魔導書目当てで紅魔館に忍び込んだあの日のことなのだから。
 記憶の恒常性が保てない以上、フランの人格は砂上の楼閣のように不安定だ。自らの過去に身に覚えのない事実が存在するのは、自分という存在が見えざる手によって弄ばれているのに等しい。それ故フランは、何も知らない者からは『気がふれている』と見なされるのだろう。彼女の記憶と私達の記憶がすれ違い続ける故に。 

 以上が私がレミリアより伝え聞いた全て、そしてフランが閉じ込められることとなった原因だ。
 レミリアは、どんなに手を尽くしても妹の記憶は一つにならないと悟った。だからこそ、妹と外界との接触を出来るだけ断とうと考えたのだ。毎日が変化のない平坦な日常ならば、記憶の不整合も心配する必要はないだろうから。四日前も三日前も二日前も一日前も同じ、何もない日なのだから。 

   ◆   ◆   ◆

「くそっ!」

 魔理沙は今まで書き付けていたペンを机に叩き付けると、誰に向けるとも知れない怒号をあげる。そして首を天井へと向けると、大きく天へと手を伸ばす。お手上げとも言わんばかりに。

「一体どうすりゃ良いんだ……!」

 レミリアの考えとフランの秘密は判った。でも、だからこそ今回のレミリアの行動には疑問が残ると魔理沙は考えた。今まで495年に渡って妹を閉じ込め続けたならば、何故今になって自分と接触するような真似を許したのか。それも弾幕ごっこのような短時間のものではなく、じっくりと話し合えるような長時間の触れ合いを。
 魔理沙が思うに、レミリアもまた悩んでいるのではないだろうか。確かに変化のない毎日ならば、記憶の不連続性は問題ではなくなる。しかしそれは果たして生きていると言えるのだろうか。何もない真っ白な道をただ歩き続けるだけの毎日、吸血鬼ともなればその道の長さも一入だろう。そんな道を歩かせることが姉として正しいのか、レミリアは悩み続けているのではないか。

 これは中々難しい問題だぜ、と魔理沙は独りごちる。何しろ495年悩み続けても未だに答えが出ない問題なのだ。人間である自分が同じように悩んでも、生きているうちに答えが出るとは思えない。魔理沙は天井から目線を机に戻すと、腕を組んで今まで書いていた日記帳を睨み付ける。何か良い方法は無いものかと。

「よし!」

 悩んでも答えが出ないなら、動けば答えが出るかも知れない。魔理沙はそんな根拠のない考えを胸に、勢い良く椅子から立ち上がった。
 そしてその立ち上がった勢いのまま、魔理沙は視線を部屋中に巡らせる。そして乱雑な室内より目当ての物を見付けると、それを引っ掴み家より飛び出していった。

 魔理沙の持ち出したもの。それは何の変哲もない白紙の日記帳だった。魔理沙は、日記帳をフランの外部の記憶領域にしようと考えたのだ。フランがその日にあった事柄を日記に記帳することで、その記憶が別のフランへと伝わる。そしてそのフランがまた日記帳に新しいページを一つ増やし、次のフランへと手渡す。そうやって全てのフランが記憶の共有をすれば、今の状態を少しは打破できるのではないかと。

 もちろん、乗り越えるべき障害はそれこそ山のように高く、そして多くあるだろう。第一に、フラン自身が記憶の不連続性を自覚しなければならないのだから。
 それでも、その場に佇んでじっとしているのでは目の前にある山は登れない。だからこそ魔理沙は、フランへと繋がる夜を駆ける。いつか彼女達が笑顔で手を取り合う、その時を夢見て。
 
 

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学


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鈴月

Author:鈴月
初めまして、鈴月(すずつき)と申します。最近になって東方に嵌った俄です。
ここではCoolier-クーリエ-東方創想話に投稿した作品のまとめ等を行いたいと思っています。

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何かありましたら上記の連絡先までお願いします。
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